幽玄の音が紡ぐインドの魂
― エスラジ奏者・若池敏弘による音楽の旅 ―
東インド・ベンガル地方に伝わる弓奏弦楽器「エスラジ」。
その響きはまるで時間が止まったかのような静けさと情感に満ち、聴く者を深い内なる世界へと誘います。
この幽玄の楽器を奏でるのは、台湾を拠点に国際的に活躍する音楽家・若池敏弘。
1987年にインドでタブラを学び始めた彼は、やがて旋律楽器エスラジにも深く魅了され、その演奏技術と音楽性を極めてきました。
これまでにインド、バングラデシュ、台湾、中国、カナダ、タイ、韓国など、数々の国際芸術祭に出演。
台湾では大学や文化機関での講義・演奏を通して、インド音楽の普及と教育に尽力しています。
その功績と芸術性は、台湾の「金曲賞」や「金音賞」をはじめ、世界的な音楽賞でも高く評価されています。
今回の演奏では、深く澄んだエスラジの音色とともに、インド音楽が持つスピリチュアルな力と豊かな表現に触れることができるでしょう。
◆ Esraj ― エスラジとは?
東インド・ベンガル地方で親しまれる弓奏弦楽器。外見はシタールに似ていますが、奏法は独自。
フレットを押さえて明瞭な音を出す奏法と、指を滑らせて音をつなぐフレットレス奏法を融合させることで、唯一無二の音楽表現が生まれます。
共鳴弦が音に奥行きを与え、長い弦長から生まれる幽玄で優美な音色が特徴です。
詩人ラビンドラナート・タゴールが愛した楽器としても知られ、インドではソロ演奏だけでなく歌の伴奏にも広く用いられています。